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防風林ナビ木の伐採方法>チルホールによる伐採作業の安全確保と倒木方向(基本編)
 伐採作業において、チルホール等のウインチ(以下、チルホール等)を用いると非常に大きな力で牽引することが出来ます。しかし、単純に牽引する方向に倒木するわけではありません。
 大木の伐採作業で用いるとき、牽引する力の大きさと牽引する方向は倒木方向を変える一要因に過ぎません。これを理解せずに作業を行うと重大な事故に発展します。
 大木の倒木方向をチルホール等の作用に大きく依存して作業を行う場合、正しい位置に取り付けてもチルホール等1台で控えワイヤーとして倒木方向を牽引する側の180度の範囲に制限する効果しかありません。
 木の重心に大きく逆らった方向に倒木させる場合等では、複数のチルホール等を使用し、相互作用による倒木方向の抑制効果によって、倒木方向を変更して伐採作業を行います。
 詳しくは、次ページ「重心の傾きと異なる方向に伐採する方法(応用編)」にて紹介していますが、まず基本となるこのページ内容を下部まで理解した上で次ページを確認して下さい。

チルホール等の牽引方向と倒木方向

  • 木の重心方向に対して90度からの牽引
  • ・木の重心方向に対して90度からの牽引
     伐採木は、上方向に重心が偏っいて、上方向に倒木の力が働く。
     チルホール等で左側に牽引する(控えワイヤー)ことで、右方向の倒木が抑制される。
     この相互作用により木は、ほぼ確実に左上90度の範囲に倒木する。
     チルホール等により倒木が抑制された右方向が、倒木危険がない安全な作業個所※となります。
  • 木の重心方向に対して反対方向(180度)からの牽引
  • ・木の重心方向に対して反対方向(180度)からの牽引
     伐採木は、右方向に重心が偏っいて、右方向の倒木の力が働く。
     チルホール等で左側に牽引する(控えワイヤー)ことで、右方向の倒木が抑制される。
     木の重心による倒木方向と、チルホール等による牽引方向(控えワイヤー)が逆方向に反発している。
     倒木方向は、右方向の倒木が抑制されますが、それ以外の方向は不確実であり、左方向の180度の範囲全てに倒木の危険があります。
  • 引きワイヤー・控えワイヤーとは
  • ・引きワイヤー、控えワイヤーとは
    ・控えワイヤー
     チルホール①が木の重心方向への倒木を抑制するために用いられます。
    ・引きワイヤー
     チルホール②が倒木させる方向へ牽引する力を加える為に用います。
・重要事項:伐採作業におけるチルホール等の働き
 牽引力が大きく、強度も大きいワイヤーロープを使用するチルホール等は、伐採作業において倒木方向を抑制するために用いると非常に大きな効果が期待できます。
 しかし、チルホール等による牽引方向のみで倒木方向を決定することはできません。これは、一度伐採木が倒木を始めるとその動きは早く、チルホール等によるハンドウインチの巻き取る速度では倒木速度に追いついての追加の牽引を行うことが出来ません。
 このため、動き始めた伐採木はチルホール等による牽引方向ではなく、その時点で発生する重心による傾き方向や、軸となる切込の影響を大きく受けて倒木方向が変わります。
 最終的に倒木方向は、木の重心による傾き。伐採技術による切込(受け口・追い口・ツル)。チルホール等の牽引作用が相互に働くことで初めて決定されます。

・注意点:チルホール以外のウインチや牽引資材の使用
 牽引方法にロープとハンドウインチ、トラクター等の重機を用いる時、各牽引方法と用いる資材による破断強度等に注意が必要です。
 特にロープを牽引資材やハンドウインチの台付けに用いる場合、ウインチの性能や伐採木の耐力と比較すると破断強度が低く、また、ハンドウインチに安全装置がないため、考えなしに力いっぱい作業を行うと作業途中に突然破断する等の恐れがあります。
 牽引途中での能力の不足や、特に牽引資材が破断することは、重大な事故を招く恐れがあり大変危険です。
 ロープ、ワイヤーロープ、スリング、台付けを行う箇所全てにおいて、強度(耐力)を確認することが重要です。

・注意点:チルホール等の牽引資機材の設置・変更について
 牽引等に用いる資機材の設置及び変更は、伐採木の幹に切込を入れる前に行います。
 切込を入れる作業開始後の牽引ロープ設置作業や牽引作業開始後にウインチ等の変更を行うことは、予想外の倒木を招く恐れがあり危険です。
 切込を入れたあとは、中断せずに作業を行えるよう整えます。

※安全な作業個所
 チルホール等により倒木方向を抑制した場合でも、倒木時に切断部の跳ね返り。
 牽引箇所(取付位置)が不適切な場合には、倒木が反転するなどして巻き込まれる恐れがあります。
 倒木がない方向であっても、適正な伐採技術(切込)や退避行動が必要です。

 次ページ:重心の傾きと異なる方向に伐採する方法(応用編)

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