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防風林ナビ木の伐採方法>チルホールを使用した伐採方法(抜倒方向を変えて伐採する方法)
 木の伐採作業では、木の重心よる向きが倒木方向に大きく影響します。
 これに逆らって異なる方向に伐採するためには、万能ウィンチであるチルホールを用いる方法が一般的です。
 チルホールによる牽引1箇所を控えワイヤーとして使用することで、倒木方向を180度の範囲に制限することができ、単に倒木方向を変えるだけでなく、作業者の安全を確保するためにも利用されます。(牽引している反対側には倒れない。)

重心と異なる方向への伐採作業
 伐採作業によるチェンソーやクサビによる方向調整は、木が大きく傾く。枝振りが偏っているなどして重心が大きく偏る大木の伐採作業ではその倒木方向を大きく変えることは出来ません。
 重心に逆らって方向を変えるためには、これを越える大きな力で牽引することが必要となります。

・使用機材
・チェンソー(リアハンドル) ・ワイヤーロープ ・台付けワイヤー ・ナイロンスリング ・脚立 ・チルホール等のウインチ類一式 ・・ノコギリ ・梯子 等

チルホールを使用した伐採方法

  • 伐採に使用するチェンソー
  • ・資機材1
    通常の伐採作業に用意した資機材
    ・チェンソー
    ・チェンソー保護具 等
    ・写真上の赤いチェンソーが枝払に用いるトップハンドル型。
    ・写真下のオレンジ色のチェンソーが伐採に用いるリアハンドル型。
  • チルホール資材
  • ・資機材2
    牽引するために用意した資機材
    ・チルホール
    ・チルホール専用ワイヤーロープ
    ・台付け用ワイヤーロープ 等
  • 傾いた樹木
  • ・伐採する大木
     杉の木が写真左側に大きく傾いています。
     写真左側の奥の青い部分から果樹園となっているため、果樹園側に倒れないように伐採する必要があります。
  • チルホールの台付け
  • ・牽引するための台付け
     傾いた杉の木を牽引するため、牽引する方向にある耐力がある切り株にワイヤーをかけてチルホールを台付けします。※1(重要:ページ下部参照)
     写真では、台付けする切り株が短いことからワイヤーが外れないように滑り止めに切込みを入れ、切り込みに台付けワイヤーを巻きつけて固定しています。(あだ巻き掛け)
  • 牽引する場所
  • ・牽引箇所との取付
     木の傾きが大きく梯子等をかけることができないため、自立する脚立を立て木の上部に牽引するためのナイロンスリングを取り付けます。※2
  • あだ巻き掛け
  • ・ナイロンスリングの取付
     ナイロンスリングが幹をすべり落ちないように幹を二回り(あだ巻き掛け)させて、ワイヤーロープの牽引フックに取り付けます。
  • チルホールによる牽引
  • ・チルホールによる牽引作業 1回目-1
     取り付けたワイヤーロープをチルホールで牽引し、ワイヤーロープを張ります。
     この時、杉の木の倒木を制限する程度に張ります。必要以上に牽引すると、チェンソーで受け口を作る時に刃が挟まるため加減が必要です。
  • ワイヤーロープにより伐採木の牽引作業
  • ・チルホールによる牽引作業 1回目-2
     ワイヤーロープがチルホールの牽引により張り、たぼみがなく真っ直ぐ張っている状態です。
  • 受け口
  • ・受け口を作る
     木を倒木したい方向を考慮して受け口を作ります。
     木の重心、ワイヤーロープによる牽引方向、受け口の向きが総合的に作用して倒木方向に影響します。
  • 追い口
  • ・追い口を入れる
     受け口の反対側から追い口をいれます。
     今回は牽引によることで倒木方向を木の重心から大きく変えます。このため、追い口を浅くし、木が自重で倒木しない程度に入れます。
     追い口の目安として通常の伐採と比較して3倍程度のツルを残すようにします。
  • チルホールによる倒木
  • ・チルホールによる牽引作業 2回目-1
     受け口、追い口を入れた後、チルホールによる牽引を行います。
  • 牽引による倒木
  • ・チルホールによる牽引作業 2回目-2
     チルホールによる牽引方向と木の重心。
     受け口と追い口で出来た兆番としてはたらくツルの作用により倒木方向が決定され倒木します。
  • 伐採後
  • ・伐木後
     伐木後に同じ位置から撮影した写真です。
     同様に傾く木が奥にあるため分かりづらいですが、写真の「林」の字の箇所に倒木しています。
     木の重心では左の果樹園に直撃する方向でしたが、チルホールを用いて手前側に約70~80度倒木角度を変えました。
  • 牽引作業を行った切り株
  • ・切り株
     チルホールによる牽引を行うことで倒木させているため、切り株のツルの部分が大きく、追い口が浅い断面となっています。
・その他
 今回紹介している作業では、木の重心が向く方向に対して90度以内の範囲で倒木方向を変えています。
 木の重心が向く方向と反対向き(90度以上)に大きく倒木方向を変える場合、作業はより難しくなります。
 チルホール等の牽引1箇所で倒木を抑制できる範囲は180度の範囲であり、この180度の範囲全てに倒れる可能性があります。倒木方向を自重が向く方向から大きく変える。重心の偏りが複雑である場合には、チルホール等の牽引箇所を増やし異なる方向から牽引することで、倒木方向を更にコントロールすることが必要です。
 参考に本ページで紹介した伐採木を右側に確実に倒木させるとき、木の重心の偏り大きいことから、牽引する方向をを右手前と右奥の2箇所方向から木を挟むよう位置から牽引し、それぞれの牽引作用で倒木範囲を右側に制限させることが必要となります。

※1 伐採作業で台付けする場所
 伐採作業においては、単に台付けする場所の牽引に対する耐力だけでなく、牽引作業を行う場所について必ず作業者が安全に作業できる場所を選ばなければなりません。
 牽引作業を行う場所は、伐採木の長さの1.5倍以上の距離が必要です。
 伐採木が立木の状態にあるとき、木の長さを目測で判断することは素人にはとても難しい作業です。これを誤って万が一巻き込まれると重大な事故に繋がるものであり、伐採木の長さが判断出来ないとき十分以上の距離を必ずとることが必要です。

※2 伐採木の牽引箇所について
 伐採木を牽引する箇所は高い位置ほど軽い力で大きな作用を加えることが出来ます。
 しかし、作業性以上に伐採木を牽引する箇所は、樹木の高さの2分の1以上の高さ。又は、明らかに木全体の重心よりも高い位置に取り付けます。
 これより低い位置に取り付けて牽引を行うと、大きな力必要となるだけでなく、予定外の位置に倒木する恐れがあり危険です。

・チルホール取扱い時に注意について
 チルホールを用いた伐採作業では、通常の伐採に関する知識の他、チルホール及び用いる各種資材に関する知識が必要となります。チルホール等に関する取扱いについては、「チルホールとは」を参考にして下さい。
 次ページ:伐採により倒木した木の処理方法

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